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ケース例交通事故による受傷の可能性を否定する自動車事故工学鑑定の意見書についてその信用性を排斥した事例 松山地裁今治支部平成28年2月9日判決 判例時報2313号

依頼主:40代男性 人身事故

依頼前

本件は、当事務所の依頼人Xが、自動車同士の交通事故により、頸椎捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負ったと主張して、加害者Yに対して、損害賠償を請求した事案でした。
本件の争点は、①事故態様及び過失割合、②事故によるXの受傷の有無、程度、入通院の必要性、症状固定時期、既往症、③損害と多岐にわたるところ、XとYらは、②事故によるXの受傷の有無に関して、いわゆる自動車事故工学鑑定の意見書を証拠提出して、これを争ったという事案でした。

依頼後

本判決は、本件事故の態様、本件事故前後のXの通院経過、医師の診断をもって、Xが本件事故により頸椎捻挫及び腰椎捻挫の傷害を負ったことを推認させる事情であると解した上、
この推認を妨げる事情であるYらの自動車工学鑑定の意見書(A鑑定書)について、概要、以下のとおり判示して、その信用性を否定しました。

すなわち、本判決は、B意見書及び東京3弁護士会論文等の指摘を踏まえて、前記(ア)の手法について、当該知見の前提となる実験例が実際の自己に当てはまるか否かに疑問があり、その統計学的信頼性にも疑問があるとされている上、過屈伸、過屈曲現象のみを重視することにも疑問があるとされ、無傷限界値論の妥当性にも疑問があるとされていることを踏まえ、(ア)の手法によって、Xの受傷を直ちに否定するのは相当でないとしました。

また、本判決は、前記(イ)の手法についても、本件事故の態様を踏まえ、車体の変形量から有効衝突速度を推定する手法に疑問を呈し、A意見書と異なる衝突速度を推定するB意見書が不合理であるともいえないとしました。

その上で、本件判決は、Xが本件事故により頸椎捻挫及び腰椎捻挫の傷害を負ったものと認めました。

※(ア)頸椎捻挫が頭部の生理的前屈限界に達しない頭頸部の稼働では受傷が生じないこと(いわゆる無傷限界値の存在)、あるいは、日常生活や通常の自動車走行において体験する加速度程度では受傷が生じないことを前提として、本件事故から推測されるXの頭部の前屈度をこれと比較する手法

※(イ)Y車の損傷状況からY車の有効衝突速度を推定する手法

寄井 真二郎 弁護士のコメント

寄井 真二郎 弁護士判例時報の解説には以下のとおり記載されています。

「交通事故による頸椎捻挫等の受傷の可能性については、自動車事故工学鑑定の見地から、これが争われる事例は少なくない。
頸椎捻挫と自動車事故工学鑑定については、東京3弁護士会論文が詳細な問題提起をし、その後、議論に進展はみられるようであるが、現在でも、特に低速度衝突の事案について、自動車事故工学鑑定の意見書が提出され、頸椎捻挫等の受傷の可能性が争われる事例は見られる。」

「本件は、事例判断ではあるが、交通事故による受傷の可能性を否定する自動車事故工学鑑定の意見書について、その信用性を排斥した事例であり、同種事案の処理に当たって参考になると考えられるため、紹介した次第である。」

本件事案は、加害者側(損保会社)から、工学鑑定や医学的意見書等が提出され、その防戦におわれたものの、幸いにも、裁判所が自動車事故工学鑑定の意見書の信用性を排斥したことから、事なきを得たという事案でした。

この件に限らず、加害者側は、優秀な人材や資金力も豊富ですが、被害者側はそうではありません。必ずしも武器対等とはいえない状況です。

幸いにも、田舎弁護士の場合、加害者事案も一定限度取り扱っていることから、被害者事案においても、医師や工学の専門家等の協力を得て、闘うことができました。

今後とも、交通事故被害者の方々のために、精一杯頑張っていく所存です。

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